2021年4月30日金曜日

『宗教の現在地』池上彰・佐藤優 ★★★☆

続けざまに、この二人。


なんでこの本を買ったかと言うと、序文の佐藤の以下の一文に非常に興味をそそられたから。

われわれが生きている世界には3つのパラダイムが並存している。自由、民主主義、市場経済、啓蒙的理性などわれわれが親しんでいるモダン(近代)とともにイスラム原理主義者のようにプレモダンな価値を重視する人々、またこっかや民族の枠組み、制度化された地の枠組みを超克するプレモダンな思考をする人々がいる。

これに続いて、

宗教は、モダン、プレモダン、ポストモダンのすべての状況に適応する力を持っている。それだから宗教についての理解を深めることが、世界を解釈する上でとても役に立つ。

とくる。


特に前半部分に感動した。

これまで「モダン」や「プレモダン」、という言葉の意味がよくわからなかったが、腑に落ちた。ポストモダン、というのは仮定だと思うのですが、ほんとにそんなものは来るのでしょうか。それがなければそういう思考の枠組みさえおしゃかになるけど、

ただ、そう仮定することでとても世界がクリアに見えた。



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久しぶりにこうして書くと、語彙力や文章力が大いに下がっていることがわかります。

アカデミズムが、「大いに」歓迎されるべき職場に私はいるわけではないのが理由かしら。

私の会社はモダン的ですが、私の上司はモダンとプレモダンの間に生きている人物のような気がする。



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2人がAIについて「専門家じゃないから」とは言いつつも、「よくわからん」≒「シンギュラリティなんかありえんでしょ」的な態度で、そこにも大いに同感かつ説得力があった。

本文に、


コンピュータというのは計算機である。できることは四則演算、正確には足し算と掛け算だけだ。しかもそこで用いてるのは数学言語で、数学言語には4000年の数学の歴史の中で3つ―論理、確率、統計―しかない。その3つの数学言語に人間の脳の機能、あるいは心の昨日はあるのか。


という引用がありました。

これも、「なるほど納得、そうそうそんなことを思っていたんだよ」とつい本に線を引いてしまいましたな。

この一文は言えるようになりたいわ。

 



知的再武装』 池上彰・佐藤優 ★★★☆☆

 『知的再武装』 池上彰・佐藤優 ★★★☆☆




ぼちぼち。
この本では45歳、60歳をターニングポイントとして話を進めていきます。
わたし自身、60歳になった時のことはまだあまり考えられないけれど、
45歳は、どんな仕事をしているのだろう、
という点で興味関心を持てます。

「45歳」という歳がどういう意味合いでターニングポイントかと言うと、

45歳までに蓄積したものしか、それ以降、発揮出来ませんよ。
45歳からは新しい世界感を獲得してそれをアウトプットすることはできませんよ。

というような意味合いでした。


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とはいえ、結局この本で一番印象的なのは、雑談レベルの

60歳で知的な世界に興味を持てるかどうかで、
人生後半の豊かさ変わりますよ。
古典までとは言わないけど、ひとまず文語の世界にまで読書領域を広げることが出来ると、
読める文献が広がってお得やでー。

という流れで
古文や文語文に関する参考書関係を紹介しているところ。


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2人の経験談も入り混じってて面白い。
池上彰曰く「夫婦二人でクルーズはおすすめしない(息が詰まるので)」とのこと(笑)
佐藤優曰く「睡眠時無呼吸症候群は医者のハナシちゃんと聞くべし」とのこと(笑)


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あと、編集が良かった。
目次も丁寧に作られてて、
とめどない2人の対談を、うまいことぶつ切りにしてまとめてた。
注釈とかもこまめに入ってて、好感が持てました。

2021年1月1日金曜日

『息吹』テッド・チャン ★★★★★

おんもしろい、


『三体』がヤバ面白すぎたので、なんだか現代SFにハマってしまった。
作者は超寡作、中国系アメリカ人の、SF作家、テッド・チャン。


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どの物語も

「過去も未来も変えられない」
「人に自由意志はない」
「宇宙は有限」
「エントロピーの増大は止められない」

という暗い前提から、
それでも人間謳歌をうまいこと引き出していて、すごい。


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『商人と錬金術師の門』
が一番最初の話で、これが、良い。
千夜一夜物語(アラビアンナイト)風の雰囲気がスバラシー。


物理学者のキップ・ソーンが理論的に考えた
「アインシュタインの相対性理論と矛盾しないタイムマシン」
→タイムマシンでは過去を変えられないこと
→自己矛盾のない単一の時間線しか存在しないこと

から着想を得たとのこと。

説教臭くなくて、ディズニー見てるみたいで、かつブラックで、良い導入。


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『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』
AIのハナシ。題名もいいね。

これまた哲学的な疑問に焦点を当てた物語ではなく、
俗っぽい、恋や親子間のイライラを
(人間×人間、もしくは人間×AI)で描いてる。
しかもそのドラマが、全然おもしろい。

AIの哲学的疑問に焦点をあてる、んじゃなくて、
ドラマティックじゃない、AIの土臭さがいい。

「内向的で、思い込みが強い」性格を与えたAIが勉強得意になる、
というのが印象的、わろた、示唆的。


ーーー


『偽りのない事実、偽りのない気持ち』
2つの物語が同時並行で進んでいくのが、ドラマティックでおもしろい。


人間の記憶の曖昧さ、
人格は記憶の集積で出来ているのに、
その根拠の記憶が、事実と180度違うことがある。
その「事実」を突きつけられたときの人間のリアクションと、

動物としての人間にとって、
「事実」と「真実」ついての物語が、

アメリカの離婚家庭の父娘関係と、
ナイジェリアの近代化しつつある部族
を題材に描かれてる。

要するにおもしろい。



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題名一覧。
備忘として。


『商人と錬金術師の門』→「未来も過去も変えられない」アラビアンナイト風物語。
『息吹』→「エントロピーの増大は止められない」、成熟した異星人。
『予期される未来』→「自由意志はない」と証明するおもちゃ。ブラックユーモア。
『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』→AIとの親子関係、恋愛、
『デイシー式全自動ナニー』→子育て機械の失敗。あんまわからん。
『偽りのない事実、偽りのない気持ち』→人間の記憶の曖昧さ、記憶から人格は出来ているのに、その根拠の記憶が事実と180度違うことがある。おもしろい。
『大いなる沈黙』→オウムの話、あんまわからん。
『オムファロス』→前提が「宇宙創造論」。で、宇宙の中心が見つかって、信仰どうするか問題。の話。
『不安は自由の眩暈(めまい)である』→多世界解釈の有り得そうなバージョン、活劇。


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今、同じテッド・チャンの『あなたの人生の物語』も読んでるけど、
『息吹』は大森望の訳が良い。

並行して(村上春樹訳)のレイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』
も読んでることもあって、
訳の大切さに初めて気がついた。

って思ってたけど、『息吹』の方もよーわからん話あるな。
『あなたの人生の物語』にも素晴らしいのんあったしな。
記憶は曖昧だ。



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来年は(2021年)は、
たくさん読んで、たくさん勉強して、たくさん書いて、たくさん描きたい
と思うけれど、難しいでしょう。
それでも、前向きに、やってこー。

2020年11月4日水曜日

『三体』劉慈欣 ★★★★★

おもしろい。

久しぶりに時間を忘れて、睡眠時間を削って、毎晩楽しく、小説を読んだ。

帯に「オバマ、マークザッカーバーグも絶賛」的なことも書いてて、それも良い。

3冊で6,000円弱使いましたね…!





内容は異星人とのファーストコンタクトもの。


おもしろポイントは、

勝てそうで絶対勝てない宇宙人が敵なところ。

量子の高次元での振る舞いについて、(わかりやすく)触れているところ。

ミステリ(伏線や謎)や、サスペンス(次どうなるのー!)が上手で、

オチが納得いくところ。

全3巻で現在2巻まで翻訳済み。


***


この本で刮目すべきは、


「宇宙社会学」の「公理」

その一、生存は、文明の第一欲求である。

その二、文明はたえず成長し拡張するが、宇宙における物質の総量はつねに一定である。

から導かれる「定理」

猜疑連鎖と技術爆発

 

つまり、

宇宙では(文明同士は)食うか食われるかしかないから、私達は宇宙人に出会わないんですよ。

向こうさん(宇宙人)も「食われるかも」と考えてるから、できるだけこちらに存在を明かさないように頑張っていますよ、

という考え方が背骨になっています。


もし頑張ってツっ込むとしたら、「猜疑連鎖」のところで、なぜ異なる文明の共存がありえないか、というところがうまく理解できなかった。

ただ、この定理が背骨なので、それを前提とした物語として読むと、それでいいのだ。面白いのだ。


***



第3巻は2021年初夏に発売されるとのことで、

「最後の巻だけ少し時期が空いて、ずっとソワソワして半年ぐらい待つのやだなー」

と思っていたけど、第2巻でだいぶ気持ちいい終わり方した。


ただ、翻訳者曰く、「第3巻が一番好き」で「一番暗い」とのことなので、来年まで生きるのが楽しみ。



***



久しぶりにブログを書いた。


『息吹』テッド・チャン

『門』夏目漱石

『形』菊池寛

『皇帝の使者』フランツ・カフカ

『エッセンシャル版 チェンジリーダー』ドラッカー


についても書きたいけれど、書けるかしら。


このブログの空白期間も本は読んできたけど、どーなんでしょう、1年に20冊は読んでるのかしら。

ほんとに一時に比べると減ってるけど、別に悪いことでなはい。

もっと死ぬほど読みたいけど。


2018年2月17日土曜日

2016年8月18日木曜日

『理科系のための作文技術』木下是雄 ★☆☆☆☆

おもんない。



なんか、作法の話ばっかりしてるような印象。
マナー教室みたいなめんどくささ。
論文を書くためのルールブックみたいな。

いろんな人がこの本をおすすめするけど、、、

『新しい世界史』 羽田正 ★★★★☆

おもしろい。



なんかさー、各国によってさ、教えてる歴史とが違うやん。
それってさ、なんかおかしくない?考え方古くね?ダサくね?

皆で考えて地球史、作ろうや?


ていう本。